Q. 我が家の場合、相続税はかかるのでしょうか?
父が亡くなり、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」という書類が送られてきました。
父の財産は、自宅不動産と預貯金になります。
我が家の場合、相続税はかかるのでしょうか?
A. 「正味の遺産額」が基礎控除額を超える場合に相続税の申告が必要となります。
相続税はすべての人にかかるわけではない
まず、相続税は、亡くなったすべての人についてかかるわけではありません。
国税庁のWebサイト「平成29年分の相続税の申告状況について」によると、
「平成29年中に亡くなられた方(被相続人数)は約134万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約11万2千人で、課税割合は8.3%」
との統計データがあります。
つまり、分かりやすく例えて言うと、日本全国で1年間に100人の方が亡くなったとすると、相続税がかかることになった方は8人だけで、あとの92人は相続税がかからなかった、ということになります。
もっとも、これは「日本全国」の場合ですので、例えば地価の高い東京都に限れば、1年間に100人の方が亡くなったとすると、相続税がかかることになった方は16人。
それでも、あとの84人は相続税がかからなかった、ということになります。
(※参考「平成29年分の相続税の申告状況(東京都)|国税庁」)
基礎控除額とは?
なぜ相続税がかからなかった方がいるのかというと、相続税の計算上、「基礎控除額」というものがあるからです。
2019年現在、相続税の基礎控除額は、
3000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
となっています。
つまり、例えば、
亡くなった方:父
法定相続人:母、長男、長女(計3人)
のケースの場合、基礎控除額は、
3000万円 + (600万円 × 3人)= 4800万円
したがって、亡くなった父の正味の遺産額が4800万円を超えなければ、たとえ税務署から「相続税の申告等についてのご案内」という書類が送られてきたとしても、相続税はかかりませんし、相続税の申告を行う必要はありません。
では、上記のケースで、父より先に長男が亡くなっており、長男には子供が2人いた、というケースではどうなるでしょうか。
その場合、長男の子供2人は、長男の代襲相続人となります。
すると、
亡くなった方:父
法定相続人:母、孫1、孫2、長女(計4人)
と、法定相続人の数が増えます。
このようなケースの場合、基礎控除額は、
3000万円 + (600万円 × 4人)= 5400万円
となります。
代襲相続人がいる場合、基礎控除額の計算は、法定相続人の頭数をカウントする、と覚えておくと良いでしょう。
※法定相続人の数は、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数となります。
※法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。
正味の遺産額とは?
ここで言う「正味の遺産額」とは、不動産や預貯金などのプラスの遺産から、債務や葬式費用などのマイナスの遺産を差し引いた後の遺産額のことを言います。
実際は、プラスの財産には、
・生命保険金や退職金などのみなし相続財産
・相続時精算課税適用財産
・相続開始前3年以内に取得した暦年課税適用財産
が含まれることや、マイナスの財産である葬儀費用はどこまで認められるのか、といった細かな論点はありますが、そもそも正味の遺産額が基礎控除額に届かないことが明らかであれば、相続税がかかるかどうかを心配する必要はありません。
もっとも、自分で計算した正味の遺産額が基礎控除額ぎりぎり、あるいはあと数百万円で基礎控除額を超えるような微妙な場合は、税理士などの専門家にアドバイスを求めた方が良いでしょう。
納税がなくても、相続税の申告が必要な場合とは?
正味の遺産額が基礎控除を超えて、相続税がかかることになっても、納税しなくてよいケースがあります。
その主なケースは、
・小規模宅地等の特例(一定の条件のもと、宅地の評価を減額できる)
・配偶者の税額軽減(配偶者の課税価格が1億6000万円までか、配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者に相続税がかからない)
の特例を適用するケースになります。
これらの特例を適用するには、例え特例を適用することによって納税が発生しなくても、相続税の申告が必要となります。
以上、ご参考になさってみてください。