Q. 相続人同士の仲が悪い場合、相続手続き(遺産分割協議)はどのようになるのでしょうか?
うちは代々商売をしていて、私が3代目として店を継いでいます。
この度、母が亡くなり、遠方に暮らす兄と遺産分割協議を行うことになりました。
お恥ずかしい話ですが、私と兄は昔から仲が悪く、何を話すにもすぐに言い合いになってしまいます。
母の遺産の大部分である店舗兼自宅は、ここで商売を続けていくために、私が相続することを希望しています。
兄と話が決裂した場合、相続手続き(遺産分割協議)はどのようになるのでしょうか?
A. 相続人同士の話し合いで遺産分割協議ができない場合は、専門家を交えて話し合うか、家庭裁判所の裁判手続きを利用することになります。
法律専門家等、第三者を交えて話し合う
遺産分割協議では、通常、相続人全員で遺産の分け方についての話し合いを行います。
相続人同士の中が悪いなど、話し合いを行うことが困難な場合は、行政書士・司法書士等、相続手続きに明るい法律専門家を交えて話し合うことを検討すると良いでしょう。
話し合いの場に経験豊富で客観的な視点でアドバイスができる第三者がいると、比較的冷静に話し合いができることが期待できます。
また、話し合いの際には、事実を整理した情報が準備してあると良いでしょう。
具体的には、
・亡くなった方の財産目録
・不動産の評価額に関する資料(固定資産評価額、路線価、公示価格など)
・預貯金の通帳、残高証明書
など、話し合いのための基礎資料を揃えておきます。
また、遺産の分け方には、大きく分けて次の4つの方法があります。
①現物分割
②共有
③換価分割
④代償分割
それぞれにメリット・デメリットがあるので、相続手続きに明るい法律専門家に説明してもらいながら話し合いを行うと良いでしょう。
(※ご参考 不動産の遺産分割協議の方法)
当事者双方が弁護士に依頼し、弁護士同士で和解の道を探る
遺産分割協議は、相続人同士の話し合いで合意できるに越したことはありません。
ですが、どうしても話し合いでは解決できない場合があります。
そのほとんどの理由が、感情的な対立です。
例えば、
・生前、介護をほとんど手伝わなかった
・生前に多額の贈与を受けている
・生前に勝手に親のお金を使っていた
といったことなどがあると、感情的な対立が生まれやすくなります。
相続人同士ではもはや冷静な話し合いができなくなってしまった場合は、当事者双方が弁護士に依頼し、弁護士同士で和解の道を探るという方法があります。
家庭裁判所の裁判手続きを利用する
また、相続人同士で話し合いができない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができます。
この調停手続きでは、調停委員会から分割の割合や方法などについての希望を聞かれ、解決のための必要な調整を行いながら、合意を目指して話し合いを進めていきます。
多くの場合は、法定相続分をベースに話し合いが進められます。
調停は平日の昼間に行われ、1回の時間はおおむね2時間程度ですが、月1回のペースで行われるため、調停の成立までは、数か月から、事案によっては数年かかるケースもあります。
話合いがまとまらず調停が不成立になった場合は、続いて審判手続きが行われます。
審判手続きでは、裁判官が、遺産分割方法の決定についての審判を下します。
審判手続きでも多くの場合は、法定相続分をベースに遺産分割方法が決定されます。
このQ&Aに関する補足コメント
このQ&Aのように、相続人同士の仲が悪い場合は、相続手続き(遺産分割協議)が困難になるケースが多く見受けられます。
生前に遺言書を作成しておけば、遺産分割協議を行う必要はありません。
(もっとも、遺留分の問題は残ります。※ご参考 遺言書作成の際の注意点 遺留分とは? )
また、家庭裁判所の裁判手続きを利用するとなると、時間と労力、そして何よりも精神的な負担が大きくなります。
本ケースのような場合は、後の手続きのためにも、生前に遺言書を作成を検討すると良いでしょう。
以上、ご参考になさってみてください。