Q. 家庭裁判所で行う相続放棄をしたいのですが、どのような手続きになるのでしょうか?
地方の実家で暮らしていた父が亡くなりました。
父は生前、個人で食品関係の事業を行っていて、親戚から借金をしていました。
相続人は、東京で暮らしている私と、横浜で暮らしている弟になります。
きょうだい二人で、家庭裁判所で行う相続放棄をしたいのですが、どのような手続きになるのでしょうか?
A. 相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きを行います。
1. 家庭裁判所で行う相続放棄「相続の放棄の申述」の概要
相続の放棄の申述は、相続人が、亡くなった方のプラスの財産及びマイナスの財産の一切を受け継ぎたくないときに行う家庭裁判所の手続きになります。
相続の放棄の申述ができる人は相続人です。
相続人が未成年者の場合や、成年被後見人の場合は、その法定代理人が代理して相続の放棄の申述を行います。
なお、次の場合は、当該未成年者について、特別代理人の選任手続きを行う必要があります。
- 未成年者と法定代理人がともに相続人の場合で、未成年者のみが相続の放棄の申述をするとき
(ただし、法定代理人が先に相続の放棄の申述している場合を除きます。) - 複数の未成年者の法定代理人が、一部の未成年者を代理して相続の放棄の申述をするとき
(※参考 裁判所Webサイト 特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合))
相続の放棄の申述は、民法上、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。
相続の放棄の申述を行う先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
家庭裁判所の管轄は、こちらのページで調べることができます。
↓
裁判所Webサイト 裁判所の管轄区域
また、
- 相続の放棄の申述に必要な費用
- 相続の放棄の申述に必要な書類
- 申立書の書式および記載例
については、こちらのページで確認、ダウンロードすることができます。
↓
裁判所Webサイト 相続の放棄の申述
2. 「相続の放棄の申述」の手続きの流れ
1. まず、公的書類等の必要書類を収集します。
↓
2. 相続放棄申述書に必要事項を記入します。
★ポイント1
亡くなった方の死後3か月以上が経過していて、ご自身が、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内である場合は、疎明資料(相続があったことを知った手紙など)を揃えます。
↓
3. 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にて相続の放棄の申述を行います。
★ポイント2
郵送での申述(申請)も可能です。
郵送の場合は、管轄の家庭裁判所宛に郵送します。
↓
4. 家庭裁判所から照会文書が送付されてきますので、必要事項を記入し、文書を返送します。
↓
5. 家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書(つうちしょ)」(※)が送付されてきます。
↓
6. 家庭裁判所に「相続放棄申述受理証明書(しょうめいしょ)」(※)を請求します。
↓
7. 家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書(しょうめいしょ)」(※)が送付されてきます。
※★ポイント3
5.の「相続放棄申述受理通知書(つうちしょ)」だけでは、他の相続人が相続手続きを進めることができません。
必ず「相続放棄申述受理証明書(しょうめいしょ)」もセットで取得してください。
3. 亡くなった方の借金などのマイナスの財産がどのぐらいあるかが不明であり、かつ、プラスの財産が残る可能性もある場合
亡くなった方の借金などのマイナスの財産がどのぐらいあるかが不明であり、かつ、プラスの財産が残る可能性もある場合などに、相続人が、相続によって得た財産の限度で亡くなった方の債務の負担を受け継ぎたいときに家庭裁判所で行う手続きを「相続の限定承認の申述」と言います。
もっとも、3か月以内に財産目録を作成する必要があったり、相続人全員が一緒に手続きを行う必要があったりするなど、手続きが煩雑となる「相続の限定承認の申述」を行う相続人は少ないのが現状です。
もし、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、
- 相続
- 限定承認
- 相続放棄
のいずれかを選択することが決定できない場合は、家庭裁判所への申立てにより、この3か月間の期間を延ばしてもらうことができます。
これを、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」と言います。
実務上は、この「相続の承認又は放棄の期間の伸長」の手続きを行い、「1. 相続」もしくは「3. 相続放棄」の選択を検討する相続人が多いのが現状です。
ちなみに、平成30年度の司法統計によると、
- 相続の放棄の申述の受理件数:
215,320件(全国総数) - 相続の承認又は放棄の期間の伸長件数:
7,511件(全国総数) - 相続の限定承認の申述受理件数:
709件(全国総数)
となっています。
(引用元:裁判所Webサイト 司法統計)