Q. 遺言書の検認手続きとは?どのような流れで手続きを進めるの?
主人が亡くなり、これから相続手続きを進めようと思っています。
手書きで書いた遺言書(自筆証書遺言)の場合は、検認手続きが必要と聞きました。
検認手続きとは、どのような手続きで、これからどのような流れで手続きを進めていけばいいのでしょうか?
A. 検認手続きとは、家庭裁判所で行う、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
以下、検認手続きがどのような手続きで、どのような流れで手続きを進めていくのか解説します。
検認手続きとは?
公正証書遺言を除く遺言書の保管者、または、遺言書を発見した相続人は、遺言者が亡くなった後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。
また、封印のある遺言書は、相続人等の立会いのうえ、家庭裁判所で開封しなければならないことになっています。
検認とは、相続人等に対し、遺言書の存在、およびその内容を知らせるとともに、
・遺言書の形状
・加除訂正の状態
・日付
・署名
など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きになります。
なお、検認手続きは、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。
検認手続きの流れ
自筆証書遺言の検認手続きの流れは以下のようになります。
1. 申立てに必要となる戸籍謄本を集める
まず、申立てに必要となる戸籍謄本を集めます。
集める戸籍謄本の種類については、遺言者(亡くなった方)と相続人との続柄の関係によって異なります。
裁判所webサイトの「遺言書の検認」ページに詳しく書かれていますので、そちらから引用します。
【共通】
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】
- 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【相続人が不存在の場合,遺言者の配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】
- 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
※同じ書類は1通で足ります。
※もし,申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は,申立後に追加提出することでも差し支えありません。
※戸籍等の謄本は,戸籍等の全部事項証明書という名称で呼ばれる場合があります。
※審理のために必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。
なお、戸籍謄本は、3か月以内に発行されたものが必要となります。
2. 申立書と必要書類等を家庭裁判所に提出する
申立人は、遺言書の保管者、または、遺言書を発見した相続人になります。
申立て先の家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所となります。
例えば、遺言者の最後の住所地が東京23区内であれば、申立て先は東京家庭裁判所になります。
※申立て先の家庭裁判所は、裁判所webサイトの「裁判所の管轄区域」ページから調べることができます。
また、申立書と記載例は、裁判所webサイトの「遺言書の検認の申立書」ページからダウンロードすることができます。
申立てに必要な費用は、
・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手
となります。
連絡用の郵便切手の種類・枚数は、申立てをする家庭裁判所に確認するのが間違いないですが、東京家庭裁判所の場合は、
82円 ×(申立人+(相続人数×2))枚,10円 ×(申立人+相続人数)枚
となります。(2019年8月22日時点)
※「申立人兼相続人」は,申立人として算出。
※「相続人数」には,受遺者も含む。
(「申立てに必要な費用」については、各家庭裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)
申立書と収入印紙、郵便切手が揃ったら、1.で集めた戸籍謄本とあわせて家庭裁判所に提出します。(※実務上は、遺言書が開封されている場合は、遺言書のコピーもあわせて家庭裁判所に提出します。)
なお、申立て書類の提出は、郵送で行うことができます。
3. 家庭裁判所から検認期日通知書が届く
申立て書類を提出後、問題がなければ、1ヵ月ほどで家庭裁判所から「検認期日通知書」が各相続人の住所宛てに届きます。
検認期日通知書には、
・事件の表示 令和●年(家)第●●●●号 遺言書検認申立事件
・申立人 ● ● ● ●
・遺言者 亡 ● ● ● ●
・検認期日 令和●年●月●日 午前(午後)●時●●分
・場所 ●●家庭裁判所 第●審判廷(●階)
が記載されています。(東京家庭裁判所の場合)
相続人の中で、「高齢」「仕事」などの理由で検認期日に欠席する方がいる場合は、同封されている「回答書」を検認期日に間に合うように返送します。
※申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは各人の判断に任されており、全員が揃わなくても検認手続きは行われます。
4. 家庭裁判所にて検認手続きを行う
検認期日の当日、「申立人」が持参するものは以下のものとなります。
・遺言書の現物
・検認申立書に使用した印鑑
・身分証明書
・150円分の収入印紙(「検認済証明書」の申請手数料)
以下は、東京家庭裁判所の場合になりますが、検認期日当日は、指定時刻までに検認期日通知書に書かれている「待合室」に到着後、室内に置かれている「出頭カード」に自分の名前を記入して待機します。
検認手続きの開始は、担当書記官がお知らせしてくれます。
手続きの開始が知らされると、別室に移動し、出席した相続人等の立会いのもと、封筒を開封し、遺言書を検認します。
検認手続きは、当日出席した相続人だけで行われます。
検認後、検認済証明書の申請を行うと、遺言書に検認済証明書が合綴され、申立人に渡されます。
5. 検認済証明書付きの遺言書を使って相続手続きを行う
検認済証明書付きの遺言書を使って、預貯金等の解約・払い戻しや、不動産の相続登記等の各種相続手続きを行います。
法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)について
平成30年7月6日、民法の一部(相続法)を改正する法律が成立し、「法務局における遺言書の保管等に関する法律について」という新しい制度が始まることになりました。
この制度が始まると、遺言書保管所(法務局)に保管されている遺言書については、民法第1004条第1項の規定は適用されず、自筆証書遺言であっても検認手続きは不要となります。
遺言書保管法の施行期日は、2020年(令和2年)7月10日(金)と定められています。
この法律の施行前は、法務局に遺言書の保管を申請することはできないのでご注意ください。
【関連記事】
相続法改正② 法務局における遺言書の保管等に関する法律について
以上、ご参考になさってみてください。